ヘリコバクター・ピロリ菌とは
「ヘリコバクター・ピロリ菌は胃粘膜に感染して胃炎を惹起する。」と
H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版には書かれています。つまり人間の胃の中で生息してしばしば胃潰瘍や十二指腸潰瘍や慢性胃炎を引き起こすわけです。
ヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)は経口感染で私たちの体の中に入ってきます。井戸水を飲んでいた昔の人は簡単にこれに感染してしまうため高齢者ではピロリ菌の罹患率は非常に高いです。
胃がんの約8割はピロリ菌感染が原因という報告もあり高齢者を中心に胃がんの発生が問題になっています。
人間には異物の侵入を防ぐバリアがあり胃もそのうちの一つです。人間の胃から分泌される胃酸は食べ物を消化するのとはほかに異物を殺す働きも持ち合わせています。しかしピロリ菌はその胃酸に耐えることができます。
ウレアーゼ活性というものを持ち、胃酸を中和する物質を体から出してバリアーとしているのです。
ヘリコバクター・ピロリ菌を除菌するには
ピロリ菌を除菌するにはアモキシシリンとクラリスロマイシンまたはメトロニダゾールとPPIまたはP-CABを併用する必要があります。一次除菌はPPIまたはP-CABに加えアモキシシリンとクラリスロマイシンを使用しますが近年、クラリスロマイシンへの耐性菌の増加に伴い一次除菌の成功率は低下しています。クラリスロマイシンは小児などにも使われる抗菌薬であり以前使ったことがあればピロリ菌が耐性を持っていることも考えられます。
一次除菌で治療が完了しなかった場合二次除菌に移行します。それでも完了がしなかったら三次除菌へと移行します。
用量や治療機関などはガイドラインを見ればわかるので詳しくは書きません。
ではなぜPPIやP-CABを用いるのでしょうか。
なぜPPIやP-CABを使うの?
ピロリ菌が生息するのに最も適切とされるPHは6~7とされています。PPIやP-CABを用いることによって胃の中のPHを少し上げることができます。するとピロリ菌は増殖期を迎えます。その増殖期に抗菌薬を用いることによってピロリ菌の除菌を効率的に行うことができるわけです。
またPPIは肝臓で代謝されますがその主な代謝酵素はCYP2C19であります。この代謝酵素ですが人によっては過剰に体に持っている場合があります。そのため過剰に持っている方はPPIが想定よりも早く代謝されてしまい治療効果が落ちてしまうといわれています。
一方P-CABはそういった心配がないお薬として近年注目されています。